【旅館の撮影、泊まりたくなる写真】どちらもプロが撮っています。それでも、ここまで変わります

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Web集客担当 兼 代表の梅原です。

宿泊施設のサイトのお話をいただくとき、けっこうな確率で出てくる一言があります。

「写真は、前に撮ったやつがあるので、それ使ってください」

もちろん、それで進めることもあります。
予算にも限りがありますし、すでに良い写真をお持ちの宿もたくさんあります。
ただ、正直に言うと、旅館・ホテルのサイトで、ここがいちばんもったいないところ なんですよね。

今日は、その理由を写真そのもので見ていただきます。理屈よりも並べてみます。

同じような造りの客室でも、泊まりたくなる一枚と、そうでない一枚がある

まず、この2枚を見てください。同じ宿の、同じような造りの和室です。

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▲【写真A】手前の座卓から窓の外へ、視線が流れていく

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▲【写真B】同じような造りの和室。目線の高さと手前の余白で印象が変わる

どうでしょう。造りも、窓から海が見えることも、条件はほとんど変わりません。
それでも、受ける印象がずいぶん違うと思います。

先に正直にお伝えしますが、どちらもプロのカメラマンが撮った写真です。
撮り手が違うだけで、素人の写真と比べているわけではありません。それでも、ここまで変わります。

格の違いとは、まさにこのことだと思っています。

何が違うのか。まずは構図です

写真Aは、カメラの位置が低い。
畳と座卓が手前に大きく入っていて、そこから床の間、縁側の椅子、そして窓の外の海へと、視線がすうっと奥に流れていきます。
天井の格子も、画面の上を締める額縁として効いている。部屋の中を歩いて、いちばん景色のいい場所に座ったときの見え方 に近いんですよね。

写真Bは、立ったままの目線に近い高さです。
そのぶん天井が広く入りすぎて、部屋が間延びして見える。手前に何も置かれていないので、奥行きも出ません。
テレビとコードが目立つ位置に来ていて、視線がそこで止まってしまう。

構図というのは、要するに「お客様の目線をどこへ運ぶか」の設計 です。
旅館の客室写真なら、運びたい先はたいてい決まっています。
窓の外の景色か、その部屋でいちばん贅沢に過ごせる場所か。そこへ迷わず視線が届くように、カメラの高さと角度を決めていく。
うまくいった一枚は、見た人が頭の中で勝手にその部屋を歩き始めます。

海辺の宿は、そもそも撮影の難易度がとても高い

もうひとつ、写真Bを難しくしている理由があります。海辺の宿は、撮影の条件がとにかく厳しい んです。

理由はふたつあって、ひとつは明るさの差。窓の外は屋外の光ですから、室内よりはるかに明るい。
カメラは人間の目と違って、この明るさの幅を一度に受け止められません。
外に合わせれば室内が暗く沈み、室内に合わせれば窓が真っ白に飛ぶ。どちらかを捨てるしかなくなります。

もうひとつが、色の性質の違いです。旅館の室内の照明は、たいてい電球色でオレンジ寄り。
一方、窓の外の海と空は昼の光で青寄りです。
明るさの差と、色の差が、同時に来る。
これが海辺の宿の撮影を難しくしています。

だから、その場で一発では撮れません。露出を変えて何枚も撮っておいて、あとで丁寧に重ねていく。
室内の暖かさと、窓の外の海の色を、それぞれ別に整えていく。
手のかけ方が、そのまま仕上がりに出るところ です。

もうひと組、見ていただきます。こちらは、まったく同じ部屋を、別々のカメラマンが撮ったものです。

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▲【写真C】ソファのラインが海へ抜け、室内の灯りも生きている

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▲【写真D】写真Cと同じ部屋。コントラストが強いと、窓の外の情報が失われる

同じソファ、同じ間取り、同じ窓の外。それでも、伝わってくるものがまるで違います。

写真Cは、ソファのラインが窓に向かって伸びていて、視線が自然に海へ抜けていきます。
天井の間接照明もきちんと灯っていて、室内の空気が伝わる。外の海の色も、ちゃんと読めます。

写真Dは、コントラストが強く出すぎていて、すだれの向こうが真っ白に飛んでいます。
外に何があるのか分からない。手前のソファが画面を大きく横切っていて、どこを見ればいいのかも定まりません。

変えてはいけないのは、色温度です

ここは、リセラが撮影のときにいちばん気をつけているところなので、少し詳しく書きます。

さきほど、室内の照明は電球色でオレンジ寄りだとお伝えしました。
これを「色がついている」と考えて、白くまっすぐに補正してしまう。これをやると、宿の空気感が消えます。

あの暖かさは、宿が意図してつくったものです。
照明計画があって、和紙の色があって、木の色がある。それを白く戻してしまったら、ただの明るい部屋になってしまう。
実際にその部屋に立ったときに感じる、あのやわらかい空気が、写真から抜け落ちてしまいます。

だから室内は、その宿がつくった色のまま残す。
そのうえで、窓の外だけは別に整えて、海の青をきちんと出す。
ひとつの写真の中で、二種類の光をそれぞれ正しく扱う。
言葉にすると地味ですが、ここができているかどうかで、写真の説得力がまるで変わります。

豆知識:★の本数で、レンズが分かります

少し寄り道します。これは、カメラマンに教わった少し面白い話です。

室内の写真で、ダウンライトから★のような光の筋が伸びているのを見たことはありませんか。あの筋、実はレンズの絞り羽根の枚数で本数が決まります。
羽根が偶数枚なら、枚数と同じ本数。奇数枚なら、その2倍。6枚羽根なら6本、8枚羽根なら8本、9枚羽根なら18本、という具合です。

そして羽根の枚数は、レンズのグレードによって違います。安価なレンズは羽根が少なく、高価なレンズほど枚数が多い。
ボケの形をなめらかにするためなのですが、結果として★の本数にも違いが表れます。つまり、★の本数を数えると、どのクラスのレンズで撮られた写真か、だいたい見当がついてしまうのです。

ただしひとつだけ注意点も。高価な単焦点レンズでは、★が出ないこともあります。羽根の形が円に近いレンズだと、光の筋が広がってぼんやりするからです。
また、★は絞り込んで撮ったときに出るものなので、開けて撮れば出ません。
リセラの撮影は、そのカットに合ったレンズを選んで撮っています。宿の格を写真に出すために、機材は妥協しないところでもあります。
ぜひ一度、そんな視点から写真を見てみてみるのも新しい発見があるかも。★、何本出ていますか。

人がひとりいるだけで、写真は変わります

ここからが、個人的にいちばんお伝えしたいところです。

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▲情報は何も語っていない。それでも宿の時間が伝わる

浴衣姿の女性が、暖簾をくぐって出てくる一枚です。
この写真、宿の情報としては何も語っていません。部屋の広さも、料理の内容も、風呂の大きさも分からない。

それでも、この宿がどんな時間を過ごせる場所なのか、一枚で伝わってきませんか。
木の色、灯りの温度、浴衣の柄、そして表情。人が入ると、写真は「情報」から「体験」に変わります。

もうひとつ。

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▲引きでも寂しくならないのは、人がいるから

こちらは、客室でふたりがくつろいでいるカットです。手前は暗く落として、奥の畳のスペースだけに灯りが集まっている。
主役は人ですが、部屋の作りもちゃんと伝わる。 引きで撮っているのに、寂しくならないのは、人がいるからです。

人物撮影が難しいのは、表情を引き出すこと だからです。カメラの前で自然な表情になるのは、実はとても難しい。声のかけ方、待ち方、シャッターを切る間合い。
ここはもう、経験と人柄の領域です。女将さんや仲居さんに入っていただくときも、モデルさんにお願いするときも、そこは変わりません。

そして大事なのは、人物メインの一枚を用意することと、風景の中に人を少し入れておくこと、その両方に意味がある ということです。
前者は宿のブランドイメージそのものになりますし、後者は「ここで人が過ごしている」という空気を、さりげなく足してくれます。

料理は、色味と構図で決まります

料理写真も、旅館のサイトでは外せません。

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▲器の柄から主役へ。寄りと角度で料理は変わる

牡蠣の一皿です。手前の器の縁の柄から、貝殻、そして奥へと視線が上がっていく。
まわりは大きくぼかして、主役だけをはっきり見せています。
寄るか引くか、どの角度から入るか。それだけで、同じ料理がまるで違って見えます。

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▲湯気まで見える寄りのカット

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▲同じ朝食を引きで。全体の贅沢さが伝わる

同じ朝食を、寄りと引きで撮った2枚です。寄りのほうは湯気まで写っていて、器の中の色の並びが見えます。
引きのほうは、朝食全体の贅沢さが伝わる。
同じ被写体でも、見せたいものによって撮り分ける。
サイトに載せるときも、この2枚は役割が違います。

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▲暗く落とした背景に、断面の色が浮かぶ

こちらは、石の板に載せた肉料理。背景が暗く落ちていて、肉の断面のピンクと、いんげんの緑、かぼちゃの黄色が浮き上がってきます。
料理写真は、色が命です。ここで色温度をいじりすぎると、肉の色が急に不自然になる。
おいしそうに見えるかどうかは、ほんのわずかな色の差で決まります。

時間を待つのも、撮影の仕事

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▲この状態でいられるのは、一日に十数分

夕暮れのラウンジです。空にまだ青が残っていて、島影が沈みかけていて、室内の灯りがちょうど効いてくる時間。
この状態でいられるのは、一日のうち十数分ほどです。

外が明るすぎれば室内の灯りが負けますし、暗くなりすぎれば窓の外がただの黒になる。
ちょうど釣り合う瞬間を狙って、それまでに機材も構図も決めておいて、待つ。

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▲海の色がいちばん出る時間を選んで

こちらは反対に、真っ昼間の一枚です。海の色がいちばん美しく出る時間帯を選んで撮っています。
同じ部屋でも、時間が変われば別の写真になる。
どの時間に何を撮るか、撮影の前に組み立てておくことが、そのまま仕上がりの差になります。

サイトを支えるのは、実は細部の一枚です

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▲細部のカットが、ページ全体の質を上げる

壁のスイッチプレートに寄った一枚です。地味に見えるかもしれませんが、こういうカットがあると、サイト全体の質が上がります。

大きな写真ばかりを並べると、ページが単調になります。そこに細部のカットを挟むと、リズムが生まれて、宿のこだわりまで伝わる。
デザインする側からすると、こういう一枚があるかないかで、レイアウトの自由度がまるで違うんです。

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▲人の気配がひとつ入るだけで、空間が生きる

レストランのカットもそうです。奥で調理する料理人の姿が、少しだけ入っている。
人の気配がひとつあるだけで、空間写真が生きてきます。

リセラが提携するカメラマンのこと

ここまでの写真、すべてリセラの撮影です。そして、撮っているのは長く一緒にやっているカメラマンです。

実は、前職が一緒でした。 そこから撮影ディレクションとカメラマンという関係で、かれこれ20年以上一緒に撮影案件に組んでいます。

実はかなり大きいことだと思っていて。
撮影の現場って、決めることがものすごく多いんです。
何時にどのカットを撮るか、照明をどうするか、人にどう動いてもらうか、天候が変わったらどうするか。
もちろん、撮影に向けて香盤表を作成します。でも、完璧にその通りに進めるのはよほど余裕を組まない限り難しい。
現場でのリアルな判断を、いちいち言葉にしなくても通じる。
20年かけて積み上げてきたのは、技術というより、この呼吸のほうかもしれません。

宿の撮影は、限られた時間の中で、客室も料理も館内も人物も撮り切らないといけない。
段取りが崩れると、その日のうちに取り返せません。現場で慌てないこと。
これが、良い写真が撮れる条件だとも思っています。

撮影の日までに、宿側で用意しておくといいこと

せっかくなので、実際に撮影を入れるときに、宿側で準備しておくと仕上がりが変わることを書いておきます。

片づけと引き算。

客室に置いてあるもので、写真に入れたくないものは先に下げておく。
案内表示、リモコン、コード類、パンフレット。これだけで写真が締まります。

季節の設え。

花、掛け軸、器。季節が写り込んでいる写真は、あとから「いつの写真だろう」と思われにくくなります。

誰に入ってもらうか。

人物カットを撮るなら、事前に決めておくとスムーズです。
女将さん、仲居さん、モデルさん。それぞれ伝わるものが違います。

どの時間に何を撮るか。

夕景のカットが欲しいなら、その時間は他の撮影を入れられません。
優先順位を先に決めておくと、当日が楽になります。

写真は、一度撮れば何年も効きます

最後に。

サイトの制作費の中で、撮影は「後回しにされやすい項目」です。
目に見えて機能が増えるわけでもないですし、削れば削れてしまう。

ただ、撮った写真は、サイトだけで終わりません。
パンフレット、OTAの掲載、SNS、館内の掲示、旅行会社への提供。何年も使い続けることになります。
しかも旅館の写真は、流行り廃りが比較的ゆるやかです。一度きちんと撮っておけば、驚くほど長く効きます。

以前、旅館・ホテルのホームページ制作の記事で、サイトの顔になる写真は作り込んで撮る価値がある、と書きました。
今日はその中身を、実物でお見せしたつもりです。

「うちの写真、そろそろ撮り直したほうがいいのかな」。そう思われた方は、ぜひ一度お声がけください。
撮影だけのご相談もいただく機会がございます。サイトの制作や運用とあわせてでも、もちろん大丈夫です。
宿の魅力を、いちばん伝わる形で残すお手伝いをします。

長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。